【2021年】amazarashiのおすすめ曲10選|詩に表現される独自の世界感

【2021年】amazarashiのおすすめ曲10選|詩に表現される独自の世界感

2019年11月29日

今回の記事では、私の大好きなロックバンド「amazarasshi(あまざらし)」のおすすめ曲を紹介したいと思います。独自の世界観をもつamazarashi。その魅力を私の個人的な視点から捉えて、特におすすめしたいと思う曲を10つ集めました。メンバー構成や簡単な来歴、バンドとしての特徴など、amazarashiの基本的な情報も解説していきます。 

ロックバンド「amazarashi(あまざらし)」

f:id:minimarisuto333:20191124152817j:image

皆さんはamazarashi(あまざらし)という日本のロックバンドをご存知でしょうか。amazarashiは、ロックにポエトリーやヒップホップなどの要素を取り込んだ、ミクスチャーロックバンドです。

数年前までは知る人ぞ知るようなニッチなバンドでした。しかし最近では、東京グールや僕のヒーローアカデミアなど、人気アニメ作品とのタイアップで認知度が高まっています。日本最大のロックフェス「カウントダウンジャパン」のステージに立つほどの人気を獲得しました。

amazarashiのメンバー構成

メンバー構成は、ボーカル・ギターを担当するフロントマン「秋田 ひろむ」と、キーボードを担当している「豊川 真奈美」の2名。ライブや収録にはサポートメンバーが加わりますが、基本的にはこの2人でamazarashiです。

amazarashiの簡単な来歴

amazarashiがインディーズデビューを果たしたのは、2009年2月18日のことです。「光、再考」というミニアルバムを青森県内限定のCDショップで発売し、インディーズデビューを果たしました。

その後、2010年4月29日にソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズへ移籍し、「爆弾の作り方」というミニアルバムでメジャーデビューします。

それから、6枚のミニアルバムと4枚のフルアルバムを発表。現在(※2019年11月23日)も精力的に活動を続けており、先日の2019年11月20日にニューシングル「未来になれなかったあの夜に」を発表しました。

楽曲提供も行っている

秋田ひろむさんは、菅田将暉や中島美嘉などのアーティストに楽曲提供をしていることでも知られています。

「ロングホープフィリア」や「僕が死のうと思ったのは」など、amazarashiを聴いたことがなくてもこれらの曲は聴いたことがあるという方もいるのではないでしょうか。

「僕が死のうと思ったのは」は秋田ひろむさんが歌っているバージョンもあり、中島美嘉さんとはまた違った聴こえ方がします。

amazarashiの特徴

amazarashiの特徴を3つにまとめてお話していきたいと思います。

1.独自の世界観を支える「詩」

f:id:minimarisuto333:20191124152833j:image

まず1つ目は、「独自の世界観を支える詩」です。amazarashi最大の特徴といっても間違いではないでしょう。

amazarashiの独自の世界観は、主に「詩の力」によって支えられています。amazarashiの歌詞には、世界の理不尽に対する怒りと、それらに対して無力な自分への嘲笑や憐憫が同時に表現されています。

世界は糞の掃きだめだ、その掃きだめで惨めにもがく自分も似たようなもの。このようなイメージです。

これだけを聞くと、不幸自慢の歌なのかと思われてしまいますが、そうではありません。amazarashiの詩は、「このような状況にあったしても、「それでも」生きていたい」ということに帰結します。

世界は糞だ、そこでもがく自分も似たようなもの。それでも生きていたいと思う。

後ろ向きなようでいて、最後には前を向いているというのがamazarashiの詩です。理不尽や悪が蔓延するこの世の中で、何かを諦めるのはとても簡単です。自分を蔑んで悲観主義者のままでいるほうが居心地もいいでしょう。

しかし、どれだけ自分を蔑んで哀れんだとしても結局人間は「幸せ」を追い求めます。幸福になりたいと思ってしまうのです。

世界の理不尽や悪を変えることはできない。それを嘆き、変えられない自分を卑下して幸せを諦めようとしても、結局は幸福になりたいと思ってしまう。

人間はそういう生き物です。

amazarashiは、世界を攻撃し自分の弱さを嘆きつつ、それでも幸せになりたいということを歌う歌手です。

挫折や劣等感。嫉妬や焦燥。さまざまな負の感情に振り回されて生きるのが人間だと思いますが、amazarashiはそれらの感情を詩によって余すことなくストレートに描写し、その上で「幸福を願うことを諦めない人間」というものを表現しています。

日本のロックシーンにおいて唯一無二の世界観をもつamazarashi。その世界観を形作っているのは、世界への攻撃と自己否定の果てに導き出される幸せの追求を表現した、「詩の力」にあるといえるでしょう。

2.ボーカルが顔を出さない

f:id:minimarisuto333:20191124152847j:image

2つ目の特徴は、ボーカル&ギターを担当している秋田ひろむさんが「顔出しをしていないこと」です。

日本のロックバンドの多くは、顔を隠さずにバンド活動を行っていますよね。顔のよさから、人気を集めているバンドも少なくありません。

UVERworldのTAKUYA∞やONE OK ROCKのTAKAなど、国内で人気を博しているロックバンドは基本的にボーカルが顔を出しているものです。

そのようなシーンにあって、amazarashiは顔を出さずに10年以上活動を続けています。ライブでさえ秋田ひろむさんの顔を見ることはできません。

私は1度、amazarashiのライブに参加したことがあります。わりと近距離で観戦していましたが、秋田ひろむさんの顔は見れませんでした。つばの広いハットと薄暗いステージが作る影が、絶妙に顔を隠しているのです。

最前列なら少しは見えるかもしれませんが、メディアや映像には一切残っていないので、秋田ひろむさんの顔を見るのはほぼ不可能です。

顔出しをしない理由について、活動当初は「家で曲だけを作って、それで暮らせれば最高だな」という思いから、匿名性を保ったままインターネットを中心にプロモーション活動を行っていたそうです。

しかし今では、匿名性を保つことをひとつの表現に活かしたいという思いから、顔を出さないのだとか。

確かに、amazarashiの武器である「言葉」をまっすぐに届けるためには、余計な情報はなるべく遮断したほうがストレートに伝わるかもしれません。

私自身、音楽アーティストの情報はあまり仕入れたくないほうです。何故なら、その情報が良くも悪くも曲の聴こえ方を左右してしまうから。

曲でいいなあと思っても、政治的な活動を行っていてその主張に私が反対だとすると、いいと思った曲に対して素直な姿勢が取れなくなってしまうのです。

そういった意味でamazarashiの作品は、歌詞や映像から伝わってくるメッセージをストレートに受け取ることができます。

3.エモーショナルな歌い方

f:id:minimarisuto333:20191124152901j:image

3つ目の特徴は、ボーカルの「エモーショナルな歌い方」です。尾崎豊を彷彿とさせる熱量と、秋田ひろむさん独特の強弱のつけ方があって、非常に感情を揺さぶられます。

amazarashiの曲は、AメロやBメロは低音で音程の上下がほとんどなく、歌っているのではなく語りかけているように聴こえることが多いです。

流れるように言葉をつないでいくので、ラップのような音の刻み方に思えることも。秋田ひろむさん自身、RHYMESTARに影響を受けていると話していて、前半のパートではその影響が感じ取れます。

サビに入ると一気に音程が上がり、曲の熱量も解放されます。AメロやBメロとの差が激しく、聴いている側の感情もそれに合わせて大きく揺さぶられてしまうのです。

単に音程の強弱がついているから感情を揺さぶられるというわけではありません。秋田ひろむさんの歌い方や声質も感情を揺さぶる大きな要因のひとつです。

声質は太いのですが高音がとてもきれいで、その声をエモーショナルに歌い上げてぶつけてくるのです。うまく伝えられないのが悔しいですが、「繊細なのに激しく、力強い」といった感じだと思ってもらえれば間違いではないと思います。

私の友人でamazarashiが好きな人がいますが、彼も「歌い方と声がいいよね」と語っていました。私も秋田ひろむさんの歌い方が好きで、ほかのアーティストにはない魅力だと思っています。

amazarashiのおすすめ曲10選

f:id:minimarisuto333:20191124152916j:image

それでは、記事の本題であるamazarashiのおすすめ曲10選を紹介していきます。インディーズ時代のミニアルバムから最新のフルアルバムまで、幅広い曲を取り上げました。

私自身、8年くらい前の2011年からamazarashiを聴いていて、ほぼすべての曲を聴いたことがあります。私の好みでピックアップしていますが、長い間amazarashiを聴いてきた私にしかセレクトできない10曲です。

これからamazarashiを聴こうと思っている方はもちろん、すでに好きで色々聴いているという方もぜひ参考にしてみてください。

1.ジュブナイル / 2013年

ジュブナイル

ジュブナイル

1曲目は、2013年に発売されたアルバム「ねえ、ママあなたの言うとおり」から「ジュブナイル」を抜粋。ジュブナイルはYouTubeで映像作品も公開されており、私はアルバムより先にYouTubeからこの曲を知りました。

ジュブナイルとは、ティーンエイジャーという意味の修飾語。1970年代によく使われていた表現で、堅苦しい表現のため今ではあまり使われなくなっているそうです。

歌詞の内容は、まさにジュブナイル=ティーンエイジャーへ向けたもの。2013年、ギリギリティーンだった私には思い切り刺さりました。

amazarashiの特徴である世界への攻撃性はあまりなく、悲観的な自己を鼓舞する内省的なメッセージといった感じの曲です。

私が一番好きなのは、下記の部分。

君が君でいられる理由が 失くしちゃいけない

唯一存在意義なんだ ここに讃えよ 愚かなジュブナイル

ラストのサビです。この歌詞に至るまでのストーリーがあってこそ好きなのですが、「ここに讃えよ」という部分が私の琴線に強く触れました。

私は基本的に自己肯定感が薄く、何をやっても自信が持てない。そんな人間です。

ジュブナイルは、愚かな自分であったとしても讃えるべきだという内容の曲であり、それがこのラストのサビで強く表れているのですが、自己肯定感の薄い私はここを聴いて勇気づけられました。

ティーンエイジャーにはもちろん、自分に自信が持てない人にはぜひ聴いてみてほしい一曲です。

2.逃避行 / 2011年

逃避行

逃避行

次に紹介したい曲はこちら、2011年に発売されたファーストフルアルバム「千年幸福論」から「逃避行」。この時期のamazarashiの楽曲は、世界への恨みや憎しみが強く表現されていて、とても攻撃的でした。

逃避行は、世界への攻撃に加えて自己の不安感や焦燥感も表現されています。下記の歌詞を見れば、それがよく伝わると思うので抜粋します。

辛酸舐める日々の逆境 夢が重荷になってりゃ世話ねえ

夢のためにといって頑張ってきたのに、いつの日からか、夢のせいにして落ちぶれた日々を過ごしている。そんな時期が私にもあって、そのときは痛いくらいこの歌詞が刺さりました。

また、特に好きな歌詞が下記の部分です。

僕らを走らせるならきっとなんだっていい

恩義でも逃避でも 世間体でも逆恨みでも

私は、人間は夢中になれれば幸福なんだと思っています。どんな理由であれ、対象がどんなものであれ、夢中になれる時間こそ求め続けるべきものであり、お金やステイタスというのは結果としてついてくるものなのではないかと。

だから、誰かを笑顔にすることで夢中になれるのならそれは幸せだし、反対に誰かを恨むことで何か夢中になれるのならそれも幸せなのだと思うのです。それが、悪か正義かは別として。

夢中になれる対象で幸せを決めるのは、目的と手段がすり替わっているような印象があります。逃避行の歌詞のように、夢中になって走れるならなんだっていいのではないでしょうか。

自分がいま夢中になっていることが、世間的にどうなんだろうと不安になることはありますよね。お金にならない無意味なものなんじゃないか? 世間から見てひどく恥ずかしいものなんじゃないか?

逃避行は、「夢中になる対象で世間が何かを言ってきたとしても、気にせず走れ。例えそれが逃避行だとしても」ということを歌っている曲です。世界が息苦しく感じてきたら、ぜひこの曲を聴いてみてください。

3.それを言葉という / 2019年

それを言葉という

それを言葉という

3つ目に紹介するのは、6枚目のシングル「さよならごっこ」に収録されている「それを言葉という」という曲。この曲は、ポエトリーリーディングを使用した曲で、Aメロにあたる部分はメロディがなく喋っているように聴こえます。

ポエトリーリーディングとは、歌詞にメロディをつけずに歌う歌唱法のこと。

ロックバンドでポエトリーリーディングを使っているアーティストは少なく、私はamazarashi以外知りませんが、日本語ラップのシーンではよく使われている表現です。不可思議wonderboyやGOMESSなどがポエトリーラッパーとして有名ですね。

メロディがない分、歌いまわしやリズムに歌詞を左右されないので、使える言葉の自由度が違います。それを言葉というはポエトリーリーディングが用いられている分、ほかの曲よりもamazarashiの詩がダイレクトに伝わってきます。

それを言葉というの歌詞は、曲名が表す通り「言葉の力」を表現しています。

秋田ひろむさんはそれを言葉というのインタビューで、「僕は言葉の力を信じている。僕自身、言葉によって救われた人間だし、人ひとりの人生を変えるだけの力があると思っています」と語っていました。

amazarashiの曲すべてに言えることですが、それを言葉というはポエトリーリーディングという歌唱法も相まって秋田ひろむさんの言葉が力強く届けられてきます。

「言葉にすればたやすくて」って言葉にしなきゃ分からねえよ

君は伝えること 諦めてはだめだ それを届けて

この歌詞を見れば、それを言葉というという曲が言葉の力をテーマしていることが分かるでしょう。amazarashiがもつ「言葉の強さ」を特に感じられる一曲なので、今回のおすすめ曲の中に入れました。

4.クリスマス / 2010年

クリスマス

クリスマス

クリスマスは、2010年に発売のミニアルバム「ワンルーム叙事詩」の中に収録されている曲です。YouTube上にアニメーションのMVが公開されており、再生数は100万回を超えています。amazarashiの中でも人気曲といえるでしょう。

私がこの曲をおすすめする理由は、私自身がこの曲をとても好きだからです。

歌詞の内容は下記のサイトで詳しく解説されており、そちらを見たほうがより深く理解できると思うので、気になる方はぜひ読んでみてください。

【クリスマス/amazarashi】歌詞の本当の意味を知るとゾッとする!?悲しくも美しいMVも解説! – 音楽メディアOTOKAKE(オトカケ)

ここでは、私がクリスマスという曲を好きな理由について深堀りしていきますね。

私がクリスマスという曲を好きな理由は、曲全体に流れる清らかな雰囲気が好きだからです。

曲中には、自分のことを罪深い人間だと懺悔する男と、ミサイルと流星を見間違えてしまう幼く純粋な少女の2人が登場します。

クリスマスの雪に許しを請う男と、クリスマスの朝に夢を見る無垢な少女。同じクリスマスでも対照的な過ごし方をする2人が優しい旋律と言葉で描写され、それを聴いていると何とも言えない清らかな心地になります。

私はクリスチャンではないので、祈りという文化に親しみがありません。しかし、この曲を聴いていると、祈りという行為が持つ救いの力を感じます。理由もなく信じられる何かがあるというのは、孤独な人間にとって大きな救いになるのかもしれません。

クリスマスという曲からはそういった祈りの力が感じられ、自分の心が清らかな感情で満たされるのを感じることができます。

クリスマスはイエスキリストに祈りを捧げる日です。そういった意味で、祈りの力を体感できるこの曲はまさにクリスマスの曲といっていいのではないでしょうか。

5.吐きそうだ / 2016年

吐きそうだ

吐きそうだ

次におすすめするのは、2016年2月24日に発売された3枚目のフルアルバム「世界収束二一一六」に収録されている、「吐きそうだ」という曲です。

吐きそうだはとても悲観的な歌で、聴いていると気分が重たくなってきます。自己否定を積み重ねがんじがらめになっている人間が描写されているからです。自分を見失い、どうしようもなくなり、ギリギリのラインで生きている様子が細かく表現されていて、それが他人事のように思えないのです。

吐きそうだの歌詞の中で、私の心に深く刺さったものがありました。それが下記の歌詞です。

自分の価値観を自分で言い負かし

そいつをまた否定する言葉遊び

あまりにも的を射ていて、初めて聴いたときには思わずハッとさせられました。

まさに私のことだと思ったからです。言葉遊びを繰り返すだけで、物事を全く前に進められない。しかも、それを繰り返すうちに何もかもがどうでもよくなってしまい、自暴自棄に陥る。私はこういう経験がたくさんありました。

吐きそうだを聴いていると、どんどん自分のことが嫌いになっていきます。上記のような表現の歌詞がほかにもたくさん登場し、自分がとても無価値な人間に思えてくるからです。

それでも、私はこの曲を聴いてしまいます。それはなぜなのか? 悲観主義のぬるま湯に浸かりたいというのではありません。この曲を聴く理由は、油断すると私は傲慢な人間になってしまうから、それをさせないように自分自身を戒めるためです。

自暴自棄も何度も繰り返してきましたが、傲慢さで失敗してきた経験も数えきれないほどあります。吐きそうだを聴くことで、自分への傲慢な目線がフラットに戻されるのです。

曲の聴き方は人それぞれで、私のように聴いている人は少ないかもしれません。しかし、もし私と同じような境遇・考え方の人がいたら、ぜひ吐きそうだを聴いてみてください。等身大の自分を取り戻すことができるかもしれません。

6.隅田川 / 2009年

隅田川

隅田川

隅田川は、amazarashiのファーストミニアルバム「光、再考」に収録されている曲です。amazarashi初期の曲であり、発表されてからすでに10年が経過しました。

ファンの間では、今もなお残る名曲として語り継がれており、メジャーデビューミニアルバム「爆弾の作り方」にも収録されています。

この曲で描写されているのは、一人の女性に恋い焦がれ、隅田川の花火大会をともに歩いたことを思い返す失恋した男性の姿。甘く切ないラブソングで、恋をしている男の心情を淡く優しい言葉たちで表現しています。

私がこの曲をいいなあと思うのは、直接的ではなく間接的かつ真っすぐに想いを表現しているところ。例えば、下記の歌詞。

火影に群がる虫として 僕はあなたに焦がれて

幼い強がりかなぐり捨てて 素直になれたらそれでよかったんだ

「好きです」や「愛していました」などの直接的な言葉ではなく、「火影に群がる虫」という言葉で間接的に恋する男を描写しつつも、「僕はあなたに焦がれて」という表現でまっすぐに気持ちを表す。

言葉に言い表しにくい男の恋心を的確に表現していて、夏目漱石が「I love you」を「月がきれいですね」と訳したのに近いものを感じます。

隅田川はamazarashiのラブソングの中でもトップクラスに好きな曲です。気になる方はぜひ。

7.祈り / 2012年

祈り

祈り

次におすすめするのは、2012年6月13日発売された6枚目のミニアルバム「ラブソング」から、「祈り」。この曲は、東日本大震災の直後に発表された詩がもとになっていてます。

詩が発表された時点で祈りにはメロディがついていたそうですが、曲として世に出すにはもっとよくしてからにしたいという思いからブラッシュアップが重ねられ、詩の発表からおよそ1年後のラブソングで、ついに曲として発表されました。

地震と津波という自然の力だけでなく、原発という人類自らが作り出した文明の力によっても被害を受けてしまった東日本大震災。

被害を受けた人たちは、あまりの理不尽にやり場のない怒りを抱いたと思います。同時に、自分の力では防ぎようもない大きな力をぶつけられ、とてつもない不安の感情にかられたことでしょう。

何をどうしようと対処することができない理不尽な事象を前に、人間にできることは何か。それはもう、信じて祈ることだけなのかもしれません。

祈りは、その祈りを肯定する歌です。祈りの力を信じようという曲。

祈りそのもので何かが改善されることはありません。お金を生むこともないし空腹が満たされるわけでもない。しかし、祈りを通じて何かを信じることで、明日に希望を持つことができる。

どちらかといえばリアリストである私ですが、この曲と聴くと、目に見えないもののほうが現代を生きる人間にとっては重要なのかもしれないと感じます。現実はたやすく変えられないので、その現実をどう捉えるのかのほうが重要なのかもしれないな、と。

8.ピアノ泥棒 / 2011年

ピアノ泥棒

ピアノ泥棒

ピアノ泥棒は、2011年発売のミニアルバム「アノミー」に収録されている曲です。昔、泥棒だったピアノ弾きの男が主人公で、彼の半生がピアノを中心に描かれていきます。

私がこの曲をおすすめしたい理由は、曲中の主人公の感情に強く共感できるから。例えば、下記の歌詞。

あのピアノ盗んで 弾きたいなとっておきの

自慢のクラシックバラード

それを聴いたら 出ていったあの子も

落ちぶれちまった僕をきっと見直すはずさ

この女々しい感情が、夢見がちな男の愚かさを上手に表現しているなあと思うのです。そして私自身こういった、「たられば」を妄想して都合のいい未来を思い描いてしまいがち。

たらればを考えても仕方ないのに、どうしても考えてしまうんですよね。たらればの妄想は後悔しているのと同じで、あまりいいことではないと思っています。

ピアノ泥棒は、そんな女々しい男の物語が描写されています。でも、格好悪いわけではないのです。むしろ、これが男という生き物であって、感情を飾らず弱さをさらけ出しているという点に格好良さすら感じます。

捉え方は人それぞれですが、私はそう思いました。男性はもちろん、女性にもぜひ聴いてみて欲しい一曲です。

9.ムカデ / 2009年

ムカデ Starlight Ver.

ムカデ Starlight Ver.

ムカデは、2009年に発売されたミニアルバム「0.(れいてん)」に収録されている曲です。先ほど紹介したクリスマスと同じく、amazarashiが発足して間もない頃の楽曲。

ムカデという曲の好きなところは、メロディと歌詞がシンクロしていて、聴いていると感情を大きく揺さぶられる点です。

下から這い迫るようなメロディとパニックを起こした人間の心情のような歌詞が合わさって、心の底にある不安を掻き立てられます。パニックのような歌詞というのは、例えば下記の部分。

遮断機に置き去りの自意識

真っ二つに割れる数秒前

赤が光る 消える 光る 消える 光る 消える 光る 消える

断片的な記憶のような歌詞が多く、それだけで意味を理解するのは難しいですね。私自身、何度もこの曲を聴いていますが、歌詞を理解することはできていないように思います。

歌詞について、パニック的な描写だけでなく、一瞬だけはっきりと記憶を取り戻したような瞬間の描写もあります。それが私は好きなので、紹介しましょう。

僕は触れていたかった まだ繋がっていたいよ

ビルの屋上に立った 今更思い出すんだ

春の木漏れ日に泣いた 母の声が聞こえんだ

ここにいてもいいですか 生きていてもいいですか

もしかしたら、ムカデは自殺を考えている少年の歌なのかもしれません。歌詞の端々にそのような表現があります。歌詞のすべてを読み解かなければはっきりとした意見まで昇華させられないので、ここでは省きますが、その可能性はあるような気がします。

仮にそうだとしたら、とても危険な歌ですよね。だからこそ、私はこの曲に惹かれてしまったのかもしれないです。

10.バケモノ / 2017年

バケモノ

バケモノ

最後におすすめするamazarashiの曲は、2107年12月13日に発売された4枚目のフルアルバム「地方都市のメメントモリ」から、「バケモノ」という曲です。

バケモノの歌詞は、amazarashiの中では分かりやすい表現が多いです。直接的というか、平易な表現の歌詞が多いので、解釈の余地というのはあまり残されていないように思います。

私はバケモノのそこが好き。深みのある歌詞も好きですが、バケモノくらい真っすぐに表現してくれる曲も好きなのです。

おすすめする曲の中にひとつはそういったものを入れたいなと思い、バケモノを最後に紹介しました。

歌詞の内容は、少年の心にはバケモノが巣食っていて、少年が自分に嘘をついて自分を押し殺すたびにバケモノが肥大化していくというもの。そして、そのバケモノは誰の心にも存在しているということを示唆しています。

確かに、自分の心を押し殺していると、いずれ押し殺された自分が別の自分として肥大化し、とんでもない何かをしでかすんじゃないか?という不安を覚えることがあります。2重人格のような。

外部から何かしらの圧力を受けている人は、それに耐えるために違った自分を自分の中に作りだすことがあるそうです。

もし、バケモノを聴いて強く共感できる人は、その可能性があるかもしれません。歌詞はあくまでも想像上の表現なので、そこまで大仰なことではないと思いますが、頭の中に入れて曲を聴いてみるとまた違った聴こえ方がするかもしれませんね。

これからもamazarashiを聴き続ける

amazarashiのおすすめ曲を、私の個人的な目線から10つご紹介しました。気が付けばこの記事も1万文字以上書いていて、「自分はamazarashiについてここまで文章が書けるのか……」と我ながら驚いています。

本当は1曲ずつ感想を書いていきたいくらいの気持ちはあるのですが、あまりにも長いと記事全体の統制が取れなくなってしまうので、これで終わりにしたいと思います。

私と同じようにamazarashiを好きな人だけでなく、まだamazarashiを聴いたことがないという人にとっても、この記事が何かの参考になれば嬉しいです。私はこれからもamazarashiを聴き続けたいと思います。それでは、また。